SHIROとUZU、それぞれのブランドリニューアル。失敗と成功の理由を考察する。
SHIROのブランド一新リニューアルについて。
また、フローフシがUZUとして新レーベルを立ち上げたことについて。
ちょっとコスメに興味のあるオトナ女性なら、ここ最近目にしたニュースなのではないだろうか。2019年9月後半の出来事である。
どちらもブランドの一新という意味では共通していて、ついでに言うと、大人女性に向けたシンプルめのデザインラインであることも共通している。
しかし、SNSをはじめとするユーザーの反応を見る限り、 SHIROに対しては否定的、UZUに対しては好意的な反応が多かったように見受けられる。あくまで主観的な感覚ではあるのだけど。
ほぼ同時期に、似たようなリニューアルをはかった両者の差はなんだったのかを、私個人なりに考えてみたい。
SHIROの路線変更について
北海道発の自然派ブランド「SHIRO」は自然の素材をシンプルにというコンセプトのブランド。
2019年9月20日より順次、秋の新作コスメが発売されている。
ざっくり変更を紹介する。まず、ブランドロゴが小文字の「shiro」から、大文字の「SHIRO」へ。
ロゴ変更の背景には、海外展開を進めていく中で、強く自信あるブランドになれるようにという思いを込めて、大文字の「SHIRO」へ変更をはかったらしい。
同時に、ブランド初のマークも導入され、こちらはスキンケアや香水のキャップなどに活用されるとのこと。

旧パッケージのイメージ。すっきりと透明感がある。 出典元:https://shiro-shiro.jp/topics_detail.html?info_id=36

新しいパッケージ。以前より主張が強い。出典元:https://www.fashion-press.net/news/51490
前述の通り、リニューアル後のパッケージデザインについては「可愛くない」「前の方が良かった」「もはやKURO」と批判の声が続出している。
これについては、
『10周年を迎え皆様の期待に更に応えたいという思いから熟慮の末、一新させていただきましたが、応援頂いた皆様には突然に感じられ、不快に思われた方もいらっしゃること、深くお詫びいたします。』
と代表者が謝罪文を出すほどの事態に至っている。まだリニューアルして1週間ほどしか経っていないのに。
会員にはメールでも同内容の謝罪をしているよう。
全文はこちら→リニューアルに関するお詫びとご報告
SHIROのリデザインはなぜこうなったのか?の考察
今回の新デザインはスタイリッシュでクールなイメージに都会的で、つまり「強い」。
ボールドなサンセリフにして海外進展を!って言うのは最近の流行りではある。他のブランドでもよくみられる動きだ。
ちなみにセリフとは文字の線の端につけられる飾りのこと。そしてサンセリフっていうのは、直線的でセリフ(装飾)要素の無い書体のこと。

Googleロゴの刷新 出典元:www.ibnlive.com/tech

有名ファッションブランド・バーバリーでも。出典元:https://jp.burberry.com/a-new-identity/
シンプルで太い文字っていうのは読みやすいし、誰にでも受け入れやすいっていうのはわかる。
ただ、「SHIRO」に関してはそれが没個性になってしまい、既存顧客のことを考えられていなかったのだろうなぁと推察する。
ホワイトやグレーを基調にしていた以前のパッケージは、ナチュラルで儚げだった。ロゴに関しても、細いラインの小文字は繊細さがあった。そこには、自然派を謳う優しいブランドのイメージが表現されていたし、透明感のある女性らしさが可愛らしくて好きというファンも多かったわけだ。
今回の刷新は、まだSHIROファンですらない未知の大多数に売り込みをかけるための刷新であり、それが裏返すと、従来のshiroファンのことはどうでもいいという切り捨てになってしまった。
ついでに言うと、商品自体についてもパッケージリニューアルにあわせて内容量が減るなどの改変が行われていて、これまでを愛して使っていた既存ユーザーからみたら好ましく無いものであったと思う。
shiroのことを好きでいたユーザーをおいて、ブランドはファンですらない人の為に生まれ変わってしまった。
今の姿を愛して尽くしてくれる恋人がいたのに、もっと他の人にもモテたいからと急にイメチェンを試みたみたいな。そりゃ、見限られてもしゃーないわ。
すでにファンがいるブランドの刷新は難しい…。
FLOWFUSHI改めUZUの路線変更について
フローフシの新ブランド「ウズ バイ フローフシ(UZU BY FLOWFUSHI)」は9月27日に、新製品「38℃/99℉ リップスティック トウキョウ」と、リップトリートメント「38℃/99℉ リップトリートメント」を新発売した。
UZUの名前はすでに同社製のアイライナー等でも使われていたが、今回はリップコスメ、次いでマスカラ等も展開が予定されており、フローフシのブランドから順次新しくなっていく。

9月末発売のUZUのリップスティックは有藤も買いました。
リップトリートメントのパッケージについて新旧比べてみると、デザインテイストの変更はSHIROと似ていると言えなくも無い。
旧FLOWFUSHIではエレガンスな曲線的セリフ体だったロゴは、UZUとして生まれ変わるにあたって太いシンプルなサンセリフになった。
包装パッケージは、従来の文字が印象的なものから、ラフな質感の紙素材を用いたシンプルなものになった。本体の形状は変わらずだが、ロゴのラベリングが変更された。

旧パケ。出典元:https://www.amazon.co.jp

新パケ。出典元:https://kobarasite.com/2019/09/30/post-5798/
あくまで主観ではあるが、販売店では大々的に取り扱われているし、「かわいい」「全色買いたい」などの声も多く、リニューアルは成功だったのではという印象。
春から先行して販売していた同ブランドのアイライナーは当初売上予測の14倍の売れ行きになったという前例もあったが、今回も大成功の売上を叩き出しそうな予感がする。
UZUリニューアル成功の訳を考える。
先ほども述べたが、シンプルでパキッとした書体に生まれ変わったのはSHIROと似た動きではある。
それでも成功をしたのは、そもそものファン層の違いなのではないかと思う。
SHIROのようにナチュラルなスローライフ派とは違い、FLOWFUSHIのユーザーたちは働く都会女性が多い印象がある。
商品としても、SHIROのように独自のショップを持つスタイルではなく、薬局やバラエティショップに置いてあるプチプラ商品だ。
もともと雑多で都会的な中に存在するブランドが、今回のリニューアルでより洗練されてきたという変更であり、ブランドイメージを覆すことはなかったのだと思われる。
なぜイメージにあった変更ができたかというと、UZUのリニューアルには綿密な調査が行われているからだ。
実際、旧フローフシで販売していた「モテマスカラ」を11月から「ウズ」として発売するにあたり、ユーザー10万人にネーミングについてのアンケートを実施している。
その結果、「モテマスカラ」の存続を望む声が多数を占めたことから、新ネーミングは「UZU MOTEMASCARA(ウズ モテマスカラ)」に決定するなど、変更するにしてもユーザーボイスを反映したものにすることを徹底しているのだ。
ユーザーが自社製品のどこを好いてくれているのかの分析、
どうしたら今後も顧客の期待に応えるものを提供できるかの発想力、
それを実現する為の舵きりができるかの判断力、
その全てが、UZUにはあったのだと思う。
SHIRO同様に恋人に例えるなら、恋人に自分のどこが好き?って聞いて、そっかそっかじゃあこうしたらもっと好きになってくれる?って自分磨きをした結果、他の人にもモテるようになってきた自慢の恋人って感じである。
ファンを裏切らないのは、強いブランドになっていく為の成功の秘訣なのだと思う。
まとめ:UZUとSHIROの勝敗の分かれ目は愛され分析力
可愛いよりも美しいを目指す。
愛玩されるよりも戦うを目指す。
愛されるよりも愛したい。
UZUとSHIROのリニューアルにおいて、女性っぽさを捨てて、ユニセックスで都会的でシンプルなラインにリデザインしたのはどちらにも共通している。多様性の時代らしい方向転換である。
選択した方向性は似ているのに、結果が違っていたのは、既存のイメージやそれを愛用する人たちをどう扱ったかの差なのだ。
すでにある強みって何?何が愛されている?っていうのを強めていくのがブランド形成であって、多分それは他のブランドや、最近よく言われる個人のセルフブランディングなんかにも言える事なのだろうな〜と思う。
ブランドのデザインではよく考えたいなと思う一件でした。
![]() | 【制作実績】ゆる畑クラブ ロゴ・アイコン |
---|
![]() | 【制作実績】恵那峡Tシャツ・マルシェバッグ |
---|
![]() | 没デザインアーカイブ 2020年7月 |
---|
![]() | 吉田ユニ個展『Dinalog』感想などを今更ながらまとめておく |
---|
![]() | 【制作実績】恵那峡リニューアルイベントウィークチラシ |
---|
コメントを残す